今回は、アメリカのブッシュ政権時の闇について述べようと思う。
ブッシュ時のアメリカは、史上最大規模の超大型減税政策を「ブッシュ減税」と銘打って2001年6月と2003年1月7日の2回に渡り、総額1.7兆ドルもの巨額の減税を行なった。
それぞれ、2001年1.35兆ドルもの巨額の大型減税を実施し、2003年にも3500億ドルもの減税を行なった。
*みずほUSリサーチ NO.042 2003年4月22日 「審議が本格化するブッシュ政権の経済対策」 安井明彦主任研究員 みずほ総合研究所ニューヨーク事務所
https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/mhri/research/pdf/us-insight/MUR042.pdf
*みずほUSリサーチ NO.043 2003年5月28日 「2003年ブッシュ減税の成立ーその中身と今後のインプリケーションー」新形敦研究員 みずほ総合研究所ニューヨーク事務所
https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/mhri/research/pdf/us-insight/MUR043.pdf
この史上最大規模であり、バラマキのブッシュ政権による国家運営は、アメリカにおける大衆政治の局地であり、最大規模のポピュリズムの性格の強い動きであった。
そして、このブッシュ減税は、後の日本の減税、特に所得税減税のモデルとなってゆく。
その言説が、日本にもアメリカ同様の大型所得税減税を行われるべきだ、という論調になり、当時のマスコミを通じて流布されることとなっていった。
アメリカに日本が忠実に倣ってゆく時代であった。
世界的な政治の意味でも、ブッシュ政権においては、「9.11テロ」が勃発したことによる、「テロとの戦い」という美辞麗句を元に、戦争という悲惨を起こしてしまうことが顕出していた。
それは、三浦瑠麗氏による「シビリアンの戦争 デモクラシーが攻撃的になるとき」(岩波書店、2012年)にも著されている。
オイルマネー目的のイラク戦争と、それによる中東への影響力の行使を目的として行われたブッシュのポピュリズムは、世界構造の不安定要因を当時激烈に加速していた。
先程述べた、世論の支持率低迷を打開するため、国内においても減税によるかつてないバラマキを行い、国外へもテロとの戦いによって国内におけるナショナリズムを高めることにより低まっていた支持率の向上を図り、国外に対しても同時に国内に対しても、正に自国民に対するポピュリズムの色合いが非常に強かったと言えるだろう。
このブッシュ政権時に行われたブッシュ減税、1.7兆ドルの規模は、日本の現在における国と地方との債務残高総額1200兆円よりも大規模であり、超大国であるアメリカにとってもその財政的な意味での破壊が大幅に進んだことはまず間違いない。
このブッシュ減税1.7兆ドルの、かつてないほどの巨額のバラマキは、私たちの想像をはるかに絶するほどの破壊をアメリカにもたらし、そして最悪なことは、その財源がイラク戦争によるオイルマネーからであった可能性があるのだ。
「支持率の低迷を打開するためには手段を選ばないような姿勢」が、当時のアメリカブッシュ政権に色濃く表れていたと言えるだろう。
これが、ブッシュの行ったポピュリズムの時代であり、当時のアメリカ政治の闇であったのだ。
イラクのみならず、アフガニスタンにおいても、テロの巣窟の状態であり、非常に悲惨な環境に置かれていた。
冒頭に書いたように、1.7兆ドルもの巨額の大型減税を行なったブッシュ政権は、巨額の大型減税の予算で、国民を金で釣って愚かにし、結局イラク戦争とアフガニスタン情勢の悲惨を作り、世界に闇をばら撒いていた。
それは、石油利権という国家としての私利私欲をカモフラージュし、国民に対してテロとの戦いという名目で煽り、戦争へと駆り立てゆく、国民を欺くやり方である。
同時に、財政的にも財政規律が乱れて、上記のようにブッシュ政権においてはブッシュ減税による巨額のバラマキが行われた。
明らかな、アメリカ型大衆社会とその社会の中で行われるポピュリズムの時代であった。
それは正に「アメリカ大衆社会・政治の極致」であり、アメリカ社会が当時持っていた苦悩と困難を表していた。
ブッシュ政権は、イラク戦争をオイルマネー目的で行ったことと、アフガニスタン情勢の泥沼化を行なって、余りにもその矛盾が大きかった。
それ以外にも、テロとの戦いの負の意味として、特にイスラムの人をターゲットとした、テロリストを「魔女狩り」のように追求するという監視社会でもあった。
だから、当時のアメリカや世界は全体主義的な性質も見え隠れする危険な時代でもあった。
人に、テロリストというラベル付けをし、ターゲット化してゆくというその動きは、本当に危険な、国家による国民への監視のようでもあった。
社会の中でのテロリストへの監視が強まりすぎて、全員が疑心暗鬼にとらわれてテロリストというラベル付けをしてターゲット化してゆくという動きが発生し、本当に危険な、国家による国民の監視が行われていた。
実際的にも、よく、イスラムのテロリストがモスクに出入りしていたというニュースがあり、人々を不安に陥れていた。
それが、社会を監視社会化していたのかもしれない。
そのため、そういった社会への反省の動きが生まれ、オバマ大統領の誕生によって、アメリカ民主政治が復権することとなる。
それは、アメリカにおける大衆社会への決別であり、同時に極度のポピュリズムに満ちた動きからの決別でもあった。
そしてその成果が、更にトランプ政権誕生の動きを生み出し、間にバイデン政権というオバマ、トランプという流れへの反動を挟んで、今回のトランプ再選へとつながった。
その結果、現在のパックスアメリカーナ、アメリカの民主政治の理想に一層近づくこととなった。
正に、今現在のアメリカは、アメリカ民主政治の黄金期であり、その理想を実現しつつある。
そして、アメリカはゲティスバーグ演説でリンカーンが述べた、真の民衆による「人民の人民による人民のための政治」へ向かって進んでいる。